日本刀と精神文化

武士道とは

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武士道を世界に紹介した新渡戸稲造は、武士道の訳語として「シヴァルリー=chivalry」(礼儀正しく勇敢な騎士道精神)を活用しました。武士道は、武人・戦士たる貴人が、本来の職分にとどまらず、日常生活においても遵守すべき規範です。  武士道は、主君への絶対的な忠誠のほか、信義・尚武・名誉などを重んじます。武士は主君に命懸けで仕え、国や人を守るために身を捧げる覚悟や多くの責任を持ちました。新渡戸は武士道を「ノブレス・オブリージュ」と比肩し、武士道も高貴な身分に伴う義務であるとしています。  武士道は成文化されない規範だったからこそ、実践を強く求める拘束力を持つ掟でした。仁義や礼節などは美徳として受け継がれ、現在は身分を問わない道徳観として浸透しています。武士道は、古めかしい過去の道徳ではありません。根源的な価値観を含んでおり、いまだに力と美を持つ活きた存在なのです。

日本刀を持つ武士の特権と責任・覚悟

武士は当時最上位の階級で、特権が与えられていました。その特権のひとつが刀を持てることです。刀は武士である証。武士達は、帯刀に大きな責任が伴うと考えるようになりました。特権階級にいるからこそ己を律し、正しい行いをするときにだけ刀を振るうべきと考えたのです。不当な状況で刀を振り回す者は、卑怯者か慢心者とされました。  江戸時代における刀は、まさに武士道精神を顕在化した存在として、忠義と名誉の象徴です。

精神的支柱としての刀

戦において、日本刀の出番は多くはありませんでした。しかし、とりわけ武将クラスの武士たちが戦場に刀を持っていったのは、精神的な面での理由が主だったといわれています。
 日本刀は、神社のご神体になるほどの霊力を秘めており、霊威をまとっていると考えられていました。日本刀を見ることによって、その力強さをもらえると信じられてきたのです。刀装具も決して単なる装飾品ではありません。実用性とともに、重要な刀身を守り、武士の魂を荘厳する重要な意味を持ちます。武士たちにとって、日本刀は信仰の対象であり、心の拠り所でした。

日本人の心である日本刀を後世に伝承したい。

実は、日本刀を作る技術は存続の危機にあります。現在、刀匠は200人弱で、35年前の2/3ほどになっており、高齢化が進んでいます。作刀だけで生計を立てられている刀匠は30人に満たず、弟子を育てられる人はごく僅かです。外装品である拵を作る人や研師も少なく、後継者不足が深刻な状況にあります。刀を購入する人の少なさも課題です。刀剣に興味を持つ人は増えていますが、購入にはなかなか結びついていません。
長い歴史の中で、刀を愛する人たちは当時の「現代刀」を買い求め、優れた刀匠たちが力を尽くし、名刀を生み出してきました。今の現代刀は、未来の「国宝級の名刀」かもしれません。「玉鋼・現代日本刀プロジェクトチーム」は、日本刀の素晴らしさを世界に伝え、刀を作る職人さんを支えたいと考えています。日本の心とも呼べる日本刀を、後世に伝え続けるために。

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