

伝統的日本産鉄
玉 鋼
日本独自に発展を遂げた、ごく僅かしか作れない鋼

玉鋼は、「たたら製鉄」で作られる鋼のうち、純度が高く良質なものを指します。玉鋼は、不純物の含有量が極めて低く、「折れず、曲がらず、よく切れる」日本刀の製作に欠かせない重要な素材です。
ふだん目にする鉄鋼製品の多くは、鉄鉱石が原料です。日本でも初期は鉄鉱石による製鉄が行われました。しかし日本には鉄鉱石が少ないため、6世紀後半から砂鉄を原料とするたたら製鉄が始まります。さまざまな改良を重ね、日本独自の技術が発展しました。近代たたら製法であれば、比較的小さな炉かつ人力でも、高温で長時間熱を加えることが可能です。
10トンの砂鉄、12トンの木炭と釜土4トンを使って得られる良質な玉鋼は、おおよそ900kgだけ。大変貴重なものなのです。たたら製法で作る鋼は、非常に柔らかく伸びやすい性質を持っていて、折り返し鍛錬を経て、日本刀を粘り強くしたり、地鉄に美しい模様を表します。刀にはまさに、うってつけの鉄素材です。
古くから製鉄技術が発達していた島根県東部

たたら製鉄の最盛期には、全国の80%以上の鉄が中国山地の麓で作られていました。中国山地は、良質な砂鉄を含む地質と、木炭の生産に必要な豊かな森林に恵まれています。また、技術改良が進み流通の仕組みもできあがっていました。
たたら製鉄に従事していた技術者集団は、集落を作り村のような独特の社会「山内(さんない)」を形成しました。雲南市にある「菅谷(すがや)たたら山内」では、実際にたたら製鉄を行っていた施設「高殿(たかどの)」が日本で唯一現存し、公開されています。
安来市には、鉄づくりの神様である「金屋子神(かなやごかみ)」が降り立ち製鉄技術を広めたとされる場所があり、現在も鉄に関わる人々の信仰を集めています。
現在、日本古来の「たたら製鉄」を国の選定保存技術として唯一継承し、玉鋼を作っているのが、奥出雲にある「日刀保(にっとうほ)たたら」です。
三日三晩不休で行われる過酷な「たたら製鉄」


たたら製鉄とは、砂鉄と木炭を原料として、粘土製の炉の中で燃焼させることによって鉄を生産する製鉄法です。たたら製鉄の操業は、灼熱の炎が燃え盛る高温の部屋の中で、三日三晩不休で続けられます。操業のたびに炉を壊して完成品を取り出す必要があるため、やり直しができない一発勝負。
しかも外からは鉄のようすが見えず、うまくできているかどうかは、炉を壊した後に製鉄炉の中にできた塊を割るまでわかりません。たたらの職人は感覚を研ぎ澄ませて音と炎から炉内の状況を探り、砂鉄の量や入れる場所を調整しています。